だから?約束したから、新しいマフラー買ってないの?


「・・・」


受験で頑張ってる猛に、プレゼント位してもいいかな?


でも彼女でもないのに・・・図々しいかな。


猛の後姿を見つめていると、猛の教室から一人の女の子が出てきた。



「柚木君っ!今日の予備校の教室変更になったって!」


彼女は、猛と同じクラスの・・・確か黒木広子ちゃん。


可愛いのに頭も良いって聞いた事がある。


最近二人が話しているのをよく見かけるようになった。


「あー昨日掲示板見た」


共通の話を、普通にしている広子ちゃんが羨ましい。


同じ環境で、同じ目標を掲げて・・・



「・・・」


「ただ、予備校が一緒なだけだよ」


二人の姿を見て俯いた私に、優しく声をかけてくれたのは麻生君だった。


「麻生君・・・」


「俺の彼女も同じ予備校行ってるけど、予備校では全然話して無いって」


「本当に?」


「うん。休み時間もずっと教科書から目を離して無いって」


猛、頑張ってるんだ。


嫉妬とか、ヤキモチとか・・・


私がこんなにも心が狭いから、猛はそれを分ってて別れを決めたんだから。


邪魔しないって決めたんだから。



「大丈夫っ!私、待つって決めたんだもん!」


「偉い、偉い。猛に聞かせてやりたいよ」


ポンポンっと、優しく頭を撫でてくれる麻生君は、本当にお兄ちゃんみたい。


「それに、猛は頭の良い女よりも、澄子ちゃんみたいにちょっと抜けてる子の方が好きだから」


「・・・抜けてるってどーゆー意味ー!?」


アハハ、っと笑いながら麻生君は教室に戻って行った。


「・・・っ」



その時、一瞬猛と目が合った気がしたけど、すぐにそらされてしまい、猛も教室へと入ってしまった。


一瞬見せた、その悲しそうな辛そうな表情は何だったんだろう・・・?