私の言葉と共に、二人の関係が終わった。
目の前にいるのは、“彼氏”では無く“好きな人”に変わった。
私の左手に輝いていた指輪が、今・・・猛の手の中にある。
「これ、預かってていいか?」
“返して”では無く、“預かっていていいか”
そんな些細な言葉にも、期待してしまう。
コクンと頷いた私の手を取り、指輪をはずした。
まさか、この指輪をはずす日が来るなんて夢にも思わなかった・・・。
「猛、頑張ってね?・・・こんな事しか言えないけど・・・」
頑張って言えたのがたったの一言。
本当・・・だめだな、私。
好きな人がこれから頑張らなきゃいけないのに、すごい被害者意識持ってる。
これは別れなんかじゃ無い。
信じて待ってればきっと・・・
「澄子、俺・・・頑張るから」
猛もきっと同じ気持ちでいてくれるよね?
“俺のこと忘れて”
そんなの本心じゃ無いって分ってるよ。
「最後に、キスしていい?」
「うん」
そっと触れた唇。
何故だか、今までで一番愛しいと思った。
それはきっと、猛のキスが優しいからだね。
大丈夫、大丈夫だよ?
頑張る猛を、ずっと応援してるからね。
「じゃあ、帰るね」
唇を離して、猛の胸を押した。
だって、これ以上一緒にいたら離れられなくなっちゃうから。
“別れたくない”って、ワガママ言っちゃうから。
だから、猛に背を向けて歩くんだ。
猛が猛の道をちゃんと選んだように、
私も私の道を決めて歩き出すんだ。
それが、二人にとって分かれ道でも、同じ道でも・・・
猛を思う気持ちだけは変わらないんだ。