「澄子?俺な・・・」
少し落ち着いて、黙っていると猛が話し始めた。
近くにあるベンチに私を座らせて、猛は私の前にひざ立ちをした格好で、
私の手のひらを両手で包み込むように握りながら。
「大学に行こうと思ってる」
真っ直ぐに私の目を見つめ、はっきりとそう言った。
猛の綺麗な瞳。
私は猛の瞳が大好きだった。
「・・・遠くの、大学に行くって事?」
震える声で、やっと言えたのはこれ位だった。
私の質問に、黙って首を横に振る。
「大学は都内か・・・そこら辺にするつもりだから、遠くは無い」
じゃあ別れなくても・・・
受験の間だけ、少し距離を置く位じゃダメなの?
「希望としてはS大か、Y大・・・そこを考えてる」
猛は言った大学名は、両方とも頭が良くて有名な大学だった。
「お前、今無理だって思っただろ」
冗談っぽく微笑んだ猛に、思わず私も笑みがこぼれた。
「自分でも無理、だと思う」
すぐに真面目な顔に戻り、再び話し出した。
今の猛では、多分無理だって事、
放課後いつも学校に残ってたのは、進学の事を調べていたこと、
いつのまにかバイトも辞めて、予備校に通い始めてたこと・・・
猛はゆっくりと色んな話をしてくれた。