いやだ、いやだと暴れる澄子を抱きしめる。
涙が喉に詰まってるのか、声があまり出ていない。
ごめん・・・
泣かせてごめんな・・・
泣かせたくないと、いつも思っていた。
傷つける奴等から守ってやりたいって。
俺の全てよりもこいつが大事だった。
澄子が隣にいてくれることが、俺の存在する意味だった。
澄子を抱きしめる為にある腕、
澄子を迎えにいく為にある足、
澄子に想いを伝える為にある唇、
澄子の声を聞く為にある耳・・・
そんな風に澄子に依存し始めている自分が怖くなった。
それじゃあ、澄子がいなかったら俺はどうなるんだろうって。
こんな自分じゃ、好きな女さえも幸せには出来ないって。
頼りにされる存在でありたい。
一歩前を歩いて、どんな事からも守ってやりたい。
そのためには、今の自分じゃいけないって思った。
澄子と出会って、俺は変われた。
良い風に変われた。
何にも興味が無く、無意味に生きていた俺を変えてくれた。
澄子の素直で明るい性格が・・・
俺を・・・
「たけ・・・」
「澄子」
ずっと言えなくてごめんな。
不安にさせてごめんな。
俺のワガママでずっと不安にさせた。
言えなかったんだ・・・
“別れよう”
なんて言う勇気がずっと無かった・・・
賢に言われるまで、決心できなかったんだ。