「やだ、・・・何?」
夏なのに、手が震える。
暑い訳でも無いのに背中と手に嫌な汗がこみ上げる。
猛がこんな風にずっと頭を下げるところなんて、見た事も無い。
「・・・」
ザワザワっと、公園内にある木が風に揺られて、
たまに通る車のヘッドライトが、私達を照らしている。
「・・・」
どれ位沈黙でいただろう。
どれ位頭を下げる猛を見てただろう。
ガクガクと震える足は、自分の体重を支えるのも必死で。
「・・・っ」
緊張から来る足の震えが限界を達して、ヘタリと座りこもうとすると、
それに気づいた猛が地面に着く前に支えるように抱きしめてくれた。
私の両脇に腕を通すように持ち上げ、自分の胸に私の頭を押し付けた。
そうされて、
猛のぬくもりに包まれて、
やっと気づけたんだ。
・・・猛も震えてたんだって。
「澄子・・・俺と別れて欲しい」
猛の震える唇から出た言葉は、
私を暗闇のどん底へと突き落とす、
寂しくて、辛い一言だった。