「おぉ」
私の姿を見ると、飲みかけの缶ジュースをベンチに置き立ち上がった。
「ハァ、ごめん・・・寝てて」
笑いかけながら、寝癖が付いた髪を直そうとすると、
私の手より先に猛の手が、私の髪へと伸びた。
「柔らけぇ髪だな」
掬うように髪を触り、何度も髪を撫でる。
久しぶりの感覚に少し照れてしまう。
「それで?こんな時間に・・・」
っと、我に返ったところで何か違和感を感じた。
こんな時間にわざわざ猛が会いに来るなんて・・・
なにか大事な話があるって事じゃないの?
特に、最近の猛の様子から言っても・・・
良い話ではない。
“こんな時間にどうしたの?”
この言葉を言った瞬間に、何かが終わってしまう気がした。
嫌な予感がするのは、気のせいなんかじゃない。
だって、あの猛が。
いつも何考えてるのか分らない様なポーカーフェイスで、
無口で、
冷たくて、
淡々としている、
あの猛が・・・
「ごめん」
私に、頭を下げているの。