「・・・」


「お前の単なるワガママだ」


賢の言っていることがあまりにも正論で、俺は言葉を失った。


ただ、教室の床のタイルを無意味に見つめる。


「お前だって、分ってるはずだ。今の状態がよくない事位・・・」



賢はそこまで言うと、大きなため息をついた。



きっと、賢だってこんな事言いたくないはずなのに、俺は親友にまで気を使わせている。



「賢、今からする事は間違っていると思うか?」


俯いていた顔を上げ、真っ直ぐに賢を見るとそこには辛そうな顔をした親友の顔があった。



「辛いのはお前だけじゃねーよ。それ、忘れんな」










17時40分


教室に一人残された俺が見たのは、黒板の上にある小さな丸い時計。



一秒、一秒を確実に刻んで行く時計の針。


俺は無意味に過ぎて行く時間に焦りを感じていた。


その中で頭に残るのは、さっきまで目の前にいた親友の放った言葉。



“単なるお前のワガママだ”



その言葉を聞いた瞬間、鈍器で頭を殴られた様な気さえした。



分ってる



分ってる



「分ってンだよッ!!!」


ガン!!!


っと、イライラして傍にある椅子を蹴ると、シンとした教室に寂しく金属音が響いた。



蹴った椅子が、余韻でグラグラと揺れている。


「クッソ・・・」



最後にバランスを崩した椅子が、少し遅れたタイミングで倒れ再び教室内に金属音がこだました。