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「猛くぅん!!」
昨日はいつになくドキドキした・・・猛の家で制服を乾かしてから、・・・ゴニョゴニョをして、一層愛が深まったはずなのに!
「ハァーうっせーし、香水くせーし・・・」
「もうー猛くんの意地悪~」
今は意地悪な男がもてるのか、猛が冷たくするたびにキャーキャーと騒ぐ先輩達。
「・・・」
別にさ?猛は興味ないって言うし、全然いいんだけどさ・・・
「あーもー触んなって!」
べたべたと猛に障る人たち。
さすがに私だって気分悪い。
「クスクス。澄子超~顔、怖いよー?」
「澄子ちゃんも大変だねぇ?」
ブスーっとする私を見て笑う親友と麻生君。
「フン!猛の教室に遊びに来たと思えば何よコレ!」
猛と喋れるどころか、近づけもしない!
猛がその場を去ろうとしても付いて行く先輩。
「猛くぅん!こんなの取っちゃいなよぉー!」
そんな声がして、ふっと猛の方を見ると・・・
!?
先輩が言ってた“こんなの”とは、私の誕生日に猛が買ってくれたペアリング。
「っ!だめっ!!」
その指輪を猛の手から取ろうとしていた。
さすが猛も焦ってバッっと手を払う。
だけど、関節まで下がった指輪は払ったときの振動でスルリと猛の指から外れ、宙に飛んだ。
「あっ・・・」
カツーン
鈍い、金属音がした。
広い廊下に、指輪が落ちた音しか響いてないかのように私の耳にこだました。