『んで・・・なにをオゴッテくれんの?』


私はうつむきながらボソッと言う。


ショッピングモールの中はさすがに人が多くて騒がしく、イライラ気味の私・・・。


「なにがいい?なのかの好きなものでいいよ。」


そんなイライラしている私をなだめるかの様に、江村はわざとやわらかいテノールの声で返してくる。


それが逆効果だということに江村は気がついていない。


周りはカップルばかり・・・


そんな中、私たちは「カップル」でも何でもない「ただのトモダチ」


「トモダチ」という言葉が私の頭を駆け回り、やっと消えたと思うと虚しさを残していく。


中途半端なこの関係がもどかしい。


でも私には言う勇気がない。


ただココで立ち止まって安心しているだけ。


あーあ。


全然ダメじゃん・・・私・・・。


「なのか?聞いてる?」


『えっ!?な・・・何だっけ・・・。』


やばい・・・。悩んでて、江村の話聞いてなかった。


「もぉー!なのかボッーとしすぎ!」


『ごっごめん・・・。』


江村はハァーとため息をついて、前を向いた。


私は相変わらず下を向いている。


するといきなり江村がピタッと止まった。


『江村・・・?』


「なのか・・・俺とだとつまんない?」


え・・・?


空気が止まった。


「なんか・・・さっきからさ、なのかウワの空だし・・・。つまんないのかなって・・・。」


江村は前を向いたまま言った。


どこか、寂しげな声で・・・・。