…雨が止んでる。

あたしはなんだか気が抜けた気がして、目を瞑って良壱の肩に寄りかかった。

お母さんが逝ってしまうのと同時に、握っていた手が冷たくなった。

…テレビであるような特にすごい名言を残すわけではなく…。

眠ったまま、酸素マスクをつけて穏やかに逝ったと思う。

あたしは泣けなかった。

人の死体が目の前にあっても。

それが自分の母親であろうと、泣けなかった。

「良壱…あたし…」

心が腐ってんのかもしれない。