窓の外から、音が聞こえる。
まるで空が泣くように、少しだけの雨が降った。




母親がもう保たない。

その言葉はあの日聞いた『もう長くない』より、現実味を帯びていた。

宣告された癌。

それは母親の体を侵略していき…最後には乗っ取るだなんて、分かっていた事なのに。

予想した通りに事が起こるのはある意味恐怖だ。

「…大丈夫?」

彼女の言葉に我に返る。

本来、俺が母親にかける言葉。

「…羽瑠」

ギュッと繋いだ手からは温もりが伝わる。

けれど、現実感がまるでない。