「何したんだよ。」

「コレ。」

「え?」

「煙草。」


逃げ出したかった。
でも逃げ道なんてない。


「ちょっと来い。」

父の声。冷たい目。


逃げ出しても追いかけてくるだろう。
抵抗すれば殴られるだろう。

あたしは父が怖くて怖くてしょうがなかった。

少し気に障るような事を言ったり、睨んでもいないのに睨んだと言われたり、門限を一分でも過ぎれば、
「学校やめろ」
「髪を切れ」
「部屋のもの全部捨てろ」
「家でてけ」

今までそれで、将来の夢を失ったり、大事なものが捨てられたり、自慢の長い髪をばっさり切らされたり。

確かにあたしにも非があるときも多かった。
しかし、やり過ぎじゃないかと。


土下座して殴られたときもあった。
母も父が怖いのだろう。
いつも見ているだけだ。

なんだかもう、耐えられないと思った。