「ま、英語教えてやるよ。」

「めんどくさいから、いい。」


そう言ってあたしは加藤くんにキスをした。

その瞬間に思った。

「失敗した」と。


けど、気付いてもいないのだろう。
キスに夢中で。

あたしの口の中に広がる煙草の匂いなんてさ。


「おいで。」

彼はあたしを抱き寄せる。
あたしは彼が言う通りに動く。



そんな彼と過ごす日常が、あまりにも平和で、あたしは時々怖くなる。

いつあたしを見捨てるだろうか。
いつあたしを見なくなってしまうだろうか。


しかし、彼はあたしだけを見ててくれる。
愛してくれる。

だから、あたしは生きていられる。



そう、思っていた。