極力冷たく。
極力冷静に。
極力無表情。
のはずだったのに。
目の前は、涙でぐしゃぐしゃだ。
「お前、なんで泣いてんの?」
先輩の影が、あたしを覆う。
体育館のあちこちから、悲鳴が聞こえた。
「移動するぞ」
そう言って、ちっこいあたしを抱き上げる先輩。
また、あちこちから、悲鳴が聞こえる。
でも、先輩はわかってるんだ。
あたしの頭をぐっと押さえて、周りから見えないようにしてくれる。
安心してしまった。
安心して落ち着いたはずなのに、
あたしの心臓の音は、めちゃくちゃおっきくなってきて、身体ごと鼓動してるみたいだった。