ベッドで眠る海を見てため息をつく。

舞は海との関係に限界を感じていた。
海の愛を感じることはたくさんあった。もちろん今も。

でも、舞はその愛に答えてあげることが出来ていないような気がしていた。

「ごめん…ね?」
舞は静かに海の部屋を後にした。

外はまだ少し肌寒かった。
気温とは対照的に、風景はすっかり春になっていた。

「綺麗だなあ…」
そっと目を閉じる。

-カシャッ

舞はシャッター音にハッとして目を開いた。
後ろを振り向くと同じ高校の制服を着た男子がいた。

「…松川舞ちゃんだよねっ?」
「…そうだけど…?」

その男子は舞を見てにっこり微笑んで言った。

「可愛いね☆」

「はい?」

キョトンとしている舞を残し、男子は桜並木を歩いて行った。

「変な人……。」

そう呟いた舞の頬に暖かい風が触れた。

「…春風だ。」