そう言うと。
理央は本気で私をにらんだ。





「好きなら奪えばいいじゃない。
先輩だって婚約者がいながらシラフでアンタに手を出してる…ってコトはそういうコトでしょ。

人に何と言われようと欲しいものは欲しいのよ。
自分の気持ちを誤魔化すことで自分を騙そうとするアンタはただのバカよ。」




理央はガンッと私を突き放すように手を外すと。

私の隣にどっかりと座って近くにあったタバコに火をつけた。









厳しいけど…。
理央の言ってることはもっともだ。






桐谷慎の存在に助けられてはいるけど、そんなに自分の気持ちをギアチェンジできるほど私は器用じゃない。







好きだけど。

しゅーちゃんのコトは好きだけど、彼がお父さんになるのなら…諦めなくちゃいけない。







「理央。」

「なに。」



理央は不機嫌そうにフゥーと煙を吐き出す。




「しゅーちゃん…ね。お父さんになるの。」

「はあっ?」





大きな目をさらに大きくして私を見つめる理央。






「しゅーちゃんの彼女…妊娠してるんだって。」


「………。」


「だから…、諦めなくちゃ。
こんな気持ちを抱えてしゅーちゃんを彼女と赤ちゃんから奪っても私、幸せになんて絶対なれないから。」





理央は灰皿にトントンとタバコの灰を落としながら何も言わずに私の話を聞いてくれている。







「だから…しゅーちゃんとはコレでおしまい。
また私は新しい恋みつけるよ!!!」







無理して笑って

空元気で答えた私を冷静に見ながら





「それが…諦めるしかない理由になるの?」






と、私の目をじっと見つめた。