好きな相手の頭をポンポンするのはこの人のクセなのか。

桐谷慎にはよく頭をポンポンされてる気がするな…。





大きな手のひら。

しゅーちゃんとは違う節だった細くて長い指を見ながらそう思った。





しばらくして車が走り出すと。



「ホントに知らなかったの?藤堂に婚約者がいるって。」




桐谷慎はサラッと爆弾を投下。







「知ってたら…こんな風に動揺なんてしないです。」


「ま…そりゃーそうか…。」









そう言って。

桐谷慎は窓ガラスを少し空けて、タバコにシュボッと火をつける。







私も…聞いてみたいことがある。









「部長は…いつから知ってたんですか??」






桐谷慎がフゥーと煙を吐くとタバコ特有の苦い香りが車の中に流れてくる。







「アイツが婚約したって聞いたのは3月くらいかな。」









私と再会する前からずっと付き合ってる人いたんだ……。









「相手は同じ大学の同級生…って聞いたな。
婚約してるクセに高宮と付き合ってる…って気づいた時には正直驚いたけど。」








そう言って。

桐谷慎は皮肉っぽく笑う。








「じゃあ…何で言ってくれなかったんですか?」







知ってたなら何で。

何で早く言ってくれなかったの??








問い詰めるような声で桐谷慎のスーツを掴むと。









「俺は高宮が藤堂のコトを好きならそんな些細なことカンケーないと思ってたから。」







悪魔な笑顔で微笑むと。

桐谷慎はこんな恐ろしいコトを言い出した。