教室と生徒が話し合い、元い説教のため設けられた狭い部屋。入学式の日も西本と使った。
今向かいに居るのは安藤だ。
普段から険しい顔が余計に険しい。安藤なら西本の怪我を心配して話しを持ちかけてくると思っていた。
「なぜ、由文は怪我をしたんですか。由文に訊いても分からない。先生に病院に連れて行ってもらったとしか言わないんです。それだけじゃない。入学したあたりから由文の様子が変です。食べても吐いてるみたいだし、あいつの家に睡眠薬があった。先生、入学式の日に二人きりで会っていましたよね。先生が原因なんじゃないですか」
冷静だが、許しはしないという敵意のこもった低い声。
鋭い眼は真っ直ぐ向けられている。
「昨日怪我をした理由は、俺も知らないよ。……西本は、友達にすすめられて一人暮らしを始めたと言っていた。その友達って安藤だろう?」
少しうそぶき、俺の方から質問を返した。
「はい」
「それなら知っているよな。西本の兄や家のこと。俺は昔、西本に恨まれるようなことをした。今だって恨まれててる。でも直接の原因は俺じゃなくて、西本の兄だ」
安藤の顔が忌々しそうに歪む。
「違います。実家に住んでる中学の時はなんともなかった。あいつがおかしくなったのは、入学したあたりからだ」
「それは一人暮らしを始めた頃でもあるだろう。俺が思うに、西本は兄と離れた反動で精神を病んだろう」
「傷つけるものから離したのに、なんでそれで由文はおかしくなるんだ!」
あまり感情を露にしない安藤が苛立ちにまかせて声を荒げた。
それは納得出来ないだろう。安藤の言ってることは正しい。俺が安藤の立場なら同じくしているはずだ。
「麻酔が切れたようなものじゃないかと思う。西本の感情は殴られたってどうとも思わないくらい麻痺していたんだ。でも一人になって麻酔が切れ、今痛みに苦しんでいる」
「…………じゃあ、先生が由文に恨まれることってなんですか」
納得したかのかどうかは分からないが、安藤は俺の罪について尋ねた。
話していいのか迷ったが、西本が唯一頼っている安藤ならば話すべきだと思った。
今向かいに居るのは安藤だ。
普段から険しい顔が余計に険しい。安藤なら西本の怪我を心配して話しを持ちかけてくると思っていた。
「なぜ、由文は怪我をしたんですか。由文に訊いても分からない。先生に病院に連れて行ってもらったとしか言わないんです。それだけじゃない。入学したあたりから由文の様子が変です。食べても吐いてるみたいだし、あいつの家に睡眠薬があった。先生、入学式の日に二人きりで会っていましたよね。先生が原因なんじゃないですか」
冷静だが、許しはしないという敵意のこもった低い声。
鋭い眼は真っ直ぐ向けられている。
「昨日怪我をした理由は、俺も知らないよ。……西本は、友達にすすめられて一人暮らしを始めたと言っていた。その友達って安藤だろう?」
少しうそぶき、俺の方から質問を返した。
「はい」
「それなら知っているよな。西本の兄や家のこと。俺は昔、西本に恨まれるようなことをした。今だって恨まれててる。でも直接の原因は俺じゃなくて、西本の兄だ」
安藤の顔が忌々しそうに歪む。
「違います。実家に住んでる中学の時はなんともなかった。あいつがおかしくなったのは、入学したあたりからだ」
「それは一人暮らしを始めた頃でもあるだろう。俺が思うに、西本は兄と離れた反動で精神を病んだろう」
「傷つけるものから離したのに、なんでそれで由文はおかしくなるんだ!」
あまり感情を露にしない安藤が苛立ちにまかせて声を荒げた。
それは納得出来ないだろう。安藤の言ってることは正しい。俺が安藤の立場なら同じくしているはずだ。
「麻酔が切れたようなものじゃないかと思う。西本の感情は殴られたってどうとも思わないくらい麻痺していたんだ。でも一人になって麻酔が切れ、今痛みに苦しんでいる」
「…………じゃあ、先生が由文に恨まれることってなんですか」
納得したかのかどうかは分からないが、安藤は俺の罪について尋ねた。
話していいのか迷ったが、西本が唯一頼っている安藤ならば話すべきだと思った。