「映画の券?そんな報告聞いてないんだけど」



綾子も楽しそうな表情をしながら、見逃せないネタに食いついてきた



「報告って、そんなの必要なの?」


「そりゃ勿論!だって美亜ってば楽しいネタばかり持ってるじゃない」


「ネタって、あたしオモチャじゃないんだけど」


「まぁまぁ、それで映画って?」


口を尖らせて拗ねてみたが、何だかんだごねても綾子には勝てない美亜は話し出した




「イチ兄が試写会の券くれたの」


「わざわざ社食にまで来て?」


「ちょうど手が空いて時間が取れたんじゃないの」


「お忙しい方なのに?」


「要ちゃんに渡しに来たんじゃない?そこに、たまたまあたしが居ただけだよ」



ここまで聞いていた阿部は、キラースマイルを崩さずに核心をついた



「白石さんって常務と親しげだったよね」



主任の事を『要ちゃん』、ましてや常務の事を『イチ兄』と呼んでいる事自体、上司と部下を越えた関係が想像出来る