「ない?!」
確かに机の横に掛けたのに!
なんでだろう?!
消えた?!
「あぁ、盗られちゃったね」
と、盗られた?!
「嘘…どうしよう…」
雨は止む気配どころか、これからますます強くなっていくだろう。
もう、走って帰ろうか。
馬鹿は風邪引かないって、小橋先輩も言ってたし。
「俺が送ってあげるよ」
「え…?」
振り返った先にいた沢口先生は、相変わらずの笑顔。
「いや、でも…」
先生に送ってもらうなんて、なんだか悪いし気が引ける。
「遠慮ならいらないって。君の家は通り道だしね」
そうは言われても。
「わ、私だけそんな…」
他の女子生徒に見られると、なんだか怖いし。