「…あれ、華奈ちゃん?」
背後からかけられた声に、驚いて一瞬身体を震わせる。
「さ、沢口先生…」
さっきあんな事があったばかりだし、なんだか少し気まずい。
だけど沢口先生は、そんなのは少しも気にしていない様子で、教室に入ってくる。
「どうしたんですか?」
「鍵、閉めようと思ってさ」
そう言いながら、人差し指で鍵をクルクル回している。
「君は?」
何してたの、と愛想のいい笑顔で尋ねてくる。
この笑顔が、学園の女の子達に人気があるんだ。
悪い人じゃないし、面倒見のいい優しい先生なんだろうなって思う。
「あ、私は傘を…」
……ん?
「傘?」
あれれ?!