そこにいた全員が、零会長が口を開くのを待つ。
妙な緊張感が、そこにはあって。
私の心臓の音が、みんなに聞こえてしまいそうだ。
「…飼い主と猫」
…へ?
平然とした態度の零会長に、私まで力が抜けてしまった。
「飼い猫に、普通キスしないだろ。あ、ペットにする感覚?」
「あれは記憶がない。不可抗力だ」
“あれ”とは、1度目のこと。
じゃあ零会長…2度目は?
「不可抗力とか言ってさ、「俺だけ記憶が無いのは腹が立つ」とか何とか言って、もう1回くらいしてんじゃないの?」
「あ、零くんならありえる!」
な、ななな、なぬーー?!
どうして渚先輩は、全てお見通し?!
「したけどそれが何だよ」
悪びれも、恥ずかしげも、照れもなく、零会長ははっきりと言い切った。
「はぁ…やっぱり」
「ま、零らしいっちゃ零らしいよな」
「いやいや零くん、セクハラでしょ!」
「確かに。会長の場合、吉野の意志を無視してやった可能性の方が、はるかに高い」
「会長は強引ですからね」