この桜華学園には、とても怖い教頭先生がいる。
教頭先生がどの先生より怖いのは、入学したばかりの私でもよく知ってる。
その教頭先生から、不法侵入のうえの窃盗だなんて。
考えただけでも、背筋がゾッとする。
生きて帰って来ている零会長は、いったい何者なのだろう…。
「あれは悪ふざけがすぎた。…がしかし、楽譜をあのままにしておけば、あの歌が桜華の新校歌になっていたのは間違いない」
斎藤先輩の言葉で、零会長がそんな無茶な窃盗をした理由が分かった気がした。
「あんなの歌うくらいなら、アカペラでいいよなー」
私が聞いた話しだと、桜華の校歌を弾ける音楽教師が転勤になってしまい、校歌を弾ける者がいなくなったらしい。
録音には頼らず、ピアノで歌うのが伝統だとかで録音はなく、楽譜は見つからない。
そこで新しく校歌を作り直そうと立ち上がったのが、あの教頭先生だとか。