「冬李」
空がかげんで光が薄らぐ。
冬李の姿はいつもの縁側にあった
片足を立てて膝に腕を乗せ、空を見上げていた。
ゆうるりと、こちらを向いた瞳は何も映してしないかのようでいつもの柔らかな光がない。

「風、音」
弱い声
「冬李」
応えるように名を呼んで駆け寄る
冬李は無表情に何かを見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「僕はキミと一緒に居れてよかったよ。幸せだった。だから、僕はキミの幸せを祈る」
「わたしは今が幸せです。ほんとは、冬李と一緒に、ずっと一緒に居たい」
涙で冬李の顔が霞む
「…キミは生きてるんだ。これからも、立ち止まっちゃいけない」
歪んだ視界にいつもの冬李の柔らかな笑顔があった


立ち止まってはいけない。
先に進まなければいけない。
ゆっくりと、確かに時は流れている
いつの間にかわたしはここまで流されてそしてこれからもそうして生きてゆくのだろう。
わたしにとって一番大事なはずのあなたを置いて、