わたしは春にこの家を出てゆく
ひとりでは大きすぎるこの寂しい家を。
県外の大学に進学するのだ。

「風音、畏れてはいけないよ」
「はい…?」
「変わってゆくんだよ。すべて、変わってゆく」
そう呟いた冬李の横顔を、わたしは見ることができなかった。

また、冬李はひとりになる
この家と一緒に
穏やかに、静かに、寂しく。
ひとりで。
離れてゆくわたしを冬李はどう思うのだろうか。
わたしの心の中では冬李を裏切ってしまったことへの負い目と、自分が進む道への期待とが混沌としている


この冬が終われば、別れが訪れる