静かで寂しい大きな家、
ひとりでは大きすぎる。

縁側から差し込む日の光が家の中を照らす
布団から起き上がり、冷たい空気にからだをすくめる
「おはよう」
肩にふわりと温かさを感じる
それに手をあてて、振り返れば冬李が立っていた
肩には上着がかけられている
わたしは顔をほころばせた
「おはようございます、冬李」


ひとつ、ひかれた布団を片付け身支度をし、縁側へと足を運ぶ。
まだ暖かいとは言えない朝の光を浴びて、冬李は眩しそうに目を細めていた
そしてこちらを向いたその顔はやんわりと微笑みを浮かべ、「風音」とわたしの名前を呼んだ。
わたしも、彼の名を呼んで隣に腰を下ろす。
冷たい床にひゅっと息を呑む
「風音、寒いんだろう。無理をしなくていいよ。中に入ってて」
わたしは首を振る
冬李は困ったように小さく笑う

「春はまだ遠いね」
冬李の横顔が少し歪んだ
「はい。まだまだ遠いです。まだ、ずっと」