「まだ寝ないのですか?」
「あぁ、」
冬李はわたしの隣に、すとんと腰を落とした。
静かな、空には月も星もない夜。
しんとした空気に自然、背が伸びる
二人の、家。
外の闇に溶ける、その縁側で。
僅かに開いた距離がひどくもどかしい
「風音、風邪を引かないか?」
「いえ、大丈夫です」
首を回せば冬李の視線と重なる
暗い中でも、その瞳はきらりと光って柔らかな輝きを放つ
「だけどほら、キミ何も羽織ってないじゃないか」
「…そうですね。そろそろ中に入ります。冬李は」
問えば冬李は立ち上がってこちらに背を向けた
「風音、僕も寝るよ」
「おやすみなさい。冬李」
月も星もない夜
廊下を行く冬李は深い闇の向こうに姿を消した

ひとのおとのしない家
自分の心臓が命を刻む音だけが、やけに耳に響いた