突然振り返った有と目が合い、姫乃は自分が見詰めていたことに気付かれた恥ずかしさで、真っ赤になった。

 でも、自分を見据える緑がかったブルーグレイの瞳からは、目が反らせない。


「…手、出して」


 有が促す。


 姫乃は「えっ?」と小さく声を上げつつも、条件反射で右手を差し出した。

 その右手に、有は自分の掌からぽとぽとと飴を5つ落とした。


「お返し。…内緒ね。他の奴らには返せねえから」


 そう云うと、有はにっと悪戯っぽく笑って。


「じゃあな。風邪ひかないよーに」


 と、階段を降りていった。





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