…わたし、今、先輩の視界に入ってる…?



 呼吸さえも忘れ、姫乃はただただ立ち尽くす。

 そんな彼女から、有は無情にもすいっと視線を反らし、階下へ下りようとしていた。


 柑橘の香りが通り過ぎる―…。


 姫乃は、はっと我に返った。




 ダメ、いかないで―…!



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