そのとき、ふと首筋に熱を感じて私は顔を上げた。

 その熱の正体は、どういう訳か松本さんの指先だった。


「なっ…なんですか」


 私はとっさに熱を感じた部分に手をやって、後退る。

 不恰好にも後ろにあった大きな机に太股を打ち付けながらも逃げる私に、尚も彼女は手を伸ばしてきた。


「なっ」

「それ…」

「…え?」


 松本さんは目を見開いて、私の首筋を凝視している。

 その表情は氷のように冷たく、青ざめているようにも見える。

 でも、そんななかでも髪と瞳のなかは炎を宿して、紅く燃えていた。


「……その首筋の痕」

「え……あっ」


 キスマーク!?

 私は反射的に左首筋を両手で覆い隠した。


 もう無駄とは悟りつつも。





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