先輩は私に触れながら、松本さんを想っていたの?

 それなら、私が今の関係の終わりを告げたとき、どうして受け入れてくれなかったの?

 あのとき終わりにしてくれていれば、私はこんなにも先輩を好きになってはいなかったかも知れないのに。


 あなたの心に少し触れられた気がした。

 あなたの懐に、少し入り込めたような気がしていた。

 それは私の錯覚だったのかな?

 私の自惚れだったのかな?

 本当は、なにも知らなかったのかも知れないね、私。

 ひとりで勝手に舞い上がっていただけなのかもね。


 何故、松本さんにこれほどまでに想われながら、私を傍に置いてくれたの?



 残酷過ぎるよ。


 こんなに好きにさせて。


 私ばっかりこんなに好きで、ずるいよ。



 酷いひと、と罵りたくても、先輩の優しい顔しか想い出せないの。

 心の何処かで、先輩を信じている私もいる。


 先輩は他人の心を弄ぶような人じゃないよ、って。

 先輩は嘘吐きなんかじゃないよって。



 好きな人を信じなさい、って。





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