松本さんは、肩に落ちた赤味がかった髪を手の甲で優雅に払い退けながら、ゆっくりと歩を進め、私の前に立ちはだかった。

 腕を組んで私を見下ろすスレンダーな長身美女は、もうそれだけで迫力がある。

 彼女の意志の強そうな大きな目に見据えられ、私は思わず後退りしそうになる気持ちを必死で奮い立たせた。


 しっかりしなくちゃ。

 松本さんが何を云いたいのかは判らないけれど、先輩絡みなのは間違いない。

 こんな人気のないところに呼び出したからには、重要なことのはずだ。

 彼女にとっても、そして中途半端な立場の私にとっても。

 ともすれば、先輩と松本さんの過去の話も聞けるかも知れない。

 先輩の過去を少しでも知りたいと思っていた私には願ってもないこと。

 怯んでちゃいけない。

 私は大きく空気を吸い込んだ。





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