松本さんに連れられ行き着いた先は、旧校舎の美術室だった。

 そこは、今は特別教室としてのみ使用されているため、放課後は人気がない。

 外はむっとする程の暑さと湿気なのにも拘わらず、その教室は湿度の高さは感じるものの、北向きに位置する為かひんやりした空気が占めていた。

 美術室独特の油や絵の具の匂いと古い木の匂いとが、湿り気を帯びて立ち込め、それが私の緊張感と混ざり合って不快感を募らせる。

 早くこの場を去らなければ吐いてしまいそうなほどだ。


 私が押し黙って俯いていると、窓際の机にもたれ掛かっていた松本さんが、ゆっくり腕を組んで口を開いた。


「急に呼び出したりしてごめんなさいね。ユウに言い付ける?」

「…いいえ」


 なんてカンに障る言い方をする人なんだろう。

 元々こんな感じの悪い人なのかしら。

 それとも相手が私だから?




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