姫乃が、俺から離れていこうとしている――。


 この数日間の、姫乃の沈黙はこのことを意味していたのか。


 生理がきたって?

 俺はそんなことを気にして、彼女の傍にいた訳じゃない。

 『そんなこと』と云うのは悪いが。

 ―…でも俺にとっては、それは小さなことだったんだ。


 姫乃を失うことに比べれば。


 一緒に過ごす時間が増えるにつれ、姫乃の温かさに、冷え切った俺の奥底が癒されるような気がした。


 彼女が隣に居れば、自然に笑える自分が不思議だった。


 責任感、というのは、今となってはもう、ただのこじつけに過ぎない。

 姫乃の、隣にいる為の。


 だから、妊娠だって、今の俺なら受け入れられるのに。


 『彼氏が欲しい』だって?


 ふざけるなよ。


 誰が、他の男に渡してやるか。


 ―…でも、俺は姫乃を無理矢理抱いて、傷付けた。

 赦されることじゃない。

 俺にはきっと、彼女の隣に居る資格はない。


 だけど、手離したくないんだ――。




 『もう忘れる』?



 ――…誰が。




 忘れさせるかよ―――!






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