すると、上着の内ポケットから
銃が、一挺出てきた。
 
要からも一挺、護衛の者達から
も、それぞれ銃が出てきて
その全てを、彼は取り上げた。

「武器をしまえ」
  
透馬の言葉に、組員達は一斉に
武器を下ろす。

透馬は、一歩一歩、庵に近づく

庵もまた、護衛の肩を叩き
前へと出て来た。  

至近距離で、向き合う二人。

「たった、これだけの人数で
 よく、ここへ乗り込んで
 来れたものだな
   
 もっと、命を大切にした方が
 いいですよ、三代目・・・」

そう言って笑った後、庵の
傷ついた右肩に手をのせた
伊納組組長、透馬は、その手を
肩に擦りつけた後

三度、強く叩いた。

しかし、庵は、激痛がしたはず
なのに顔色ひとつ変えずに
黙ったまま、透馬を上目遣いで
見つめ笑みさえ零すかのような
口元を見せながら、目を伏せ
もう一度見つめた。
   
その表情、瞳の鋭さに一瞬
息を飲む透馬。

その隙を突いた庵は背中の腰元
に挟んであった銃を素早く取り
透馬の頭上に突きつけた。
 
空気が変わる・・・