あたしは部屋のドアを開けた。



「奈緒ちゃん…どうしたと?」


詩織ちゃんはまだパジャマのままだった。


「あ…あの、ユキ先輩達に聞いて…。」



「……そう…。」


詩織ちゃんばベッドに腰掛けた。




「ごめんなさいっ!」


あたしは詩織ちゃんに頭を下げた。



「…奈緒ちゃん!?」


詩織ちゃんが驚いたように言う。




「あたし…、詩織ちゃんはあたしを助けてくれたのに、自分の事しか考えてなくて…。 詩織ちゃんは一人耐えてた…。そんな詩織ちゃんに酷い事言った。謝っても許してもらえないだろうけど、本当にごめんなさいっ!」











「…許すよ…。」


「えっ!?」


あたしは驚いて顔を上げた。



「奈緒ちゃんが楓ちゃん達が怖くてあんな事口走ったことくらい、あたし、ちゃんと分かってたよ。
…奈緒ちゃんがうちに謝りに来てくれた時、正直嬉しかった。…でも、心のどこかで素直になれない自分がいて…。あたしも奈緒ちゃんに酷い事言った。 …ずっと後悔してた…。好きだった陸上も、楓ちゃん達に嫌な事されて、真剣に取り組めなくて…。だんだん自分がダメになってく気がして、自分ってこんなに弱いんだって、みじめになって…。全てが嫌になって…気付いたら、こんな事…。」


詩織ちゃんは自分の手に目をやった。


長袖を着ているからわからないけど、きっと、その手首には痛々しく包帯が巻かれているんだろう…。