「あたり前だ」
片桐くんのハッキリとした声が、私の心臓を揺さぶる。
「片桐…く…っ!?」
「そう…ですか」
高遠くんは顔を伏せて、自分の拳をギュッと握り締めた。
高遠くん…。
「……忘れられないって橘先輩の気持ち、分かりますよ」
「高遠…くん?」
「僕も、忘れられそうにありませんから…」
ニッコリ笑っている高遠くんの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
さっきの私と同じだ。
気持ちを押し潰そうとしても、無くなることは絶対なくて…
「……忘れなくてもいいよ」
「橘…先輩?」
「私が言っていい言葉じゃないけど、無理して忘れなくてもいいと思う。いや、忘れないでほしいと思う」
「………」