「………」
「ふぁ?…きゃっ!?」
いきなり腕を引っ張られ、高遠くんに抱き締められる。
「え、えええ!?」
「泣き顔も可愛いなんて思う僕は…ヒドい人なんでしょうか?」
「たかと…うく…っ」
「僕だって、橘先輩が大好きなんだ。だからこそ…なのかもしれない」
「橘先輩との縁談を、破談したくなる」と囁いて、高遠くんは私の背中に回した腕に力を入れる。
え?え??
「は、破談って…」
「そうですね。そうしましょう。縁談は破談です」
晴れ晴れした笑顔でそう言って、高遠くんは私から体を離した。
「は、はう??」
「……これで、良いんだと思う僕は馬鹿でしょうか?」