私は高遠くんの言葉を遮って、自分の拳をギュッと握った。


「分かってる。分かってるよ…でも、でもね?」

「橘…先輩?」

「これから高遠くんと一緒になったら、きっと私は高遠くんのことを好きになる…かもしれない」


目頭を制服の袖で擦りながら、必死に声を絞り出す。


「でも、この気持ちは忘れられない。そのぐらい、強い思いだから…」


“片桐くんが好きだから!!”


と言って、私は高遠くんに頭を下げた。


「……橘先輩?」

「約束を破ってごめんなさい。でも、高遠くんとの縁談は進めてもらってもいいから…」

「美羽ちゃんっ!!」


南条先輩はいやな汗を額から滲ませ、私に叫ぶ。

もう、大丈夫。

きっと、大丈夫。