「ふぇ?」


いきなり片桐くんに名前を呼ばれて、俯かせていた顔をフイッと上げる。

片桐…くん?


「………俺は、なんて橘に返事を返していいか分からなかったんだ」

「え…?」

「自分の気持ちが分からなくて、もどかしくて、むしゃくしゃして橘に当たって…」


片桐くんはそう言って、頭に巻いていたタオルをとった。

真剣な眼差しが、私をとらえる―――…


「でも、俺は橘は嫌いじゃない。嫌いになるわけがない」

「片桐…くっ」


片桐くんの言葉に、おもわず顔が火照っていく。


「俺は、橘のこと―――…」