高遠くんは凄く低い声でそう言って、片桐くんを睨み付けた。
「僕は橘先輩に今、縁談の話しを持ちかけているんです」
「縁談…?」
片桐くんは眉間にグッとシワを寄せて、私をパッと見た。
「あ、あの…それは…!!」
「本当…なのか?」
「本当ですよ。知らないかもしれませんが、僕は剣道の名門家の“高遠家”ですよ?断る理由はまず無い」
キッパリとそう言って、高遠くんは腕を組んで片桐くんを見下すような目で見つめた。
「………」
「片桐…くん?」
片桐くんは何故か黙り込んでしまい、顔をスッと伏せた。
どうしたんだろ…?
「か、片桐く…っ」
「……良かったな」