「暑いな~」独り言を呟きながら、母さんの声で起こされ少々不機嫌な私は鏡を覗き込んだ。
笑えるくらいに髪は寝癖付いているし…
まるで男の子だよ!と心の中で苦笑い。
窓際へと移り桃色のカーテンを思いっきり開けた。
その瞬間、真夏の暑い長崎の私の部屋だけが北極へと変わり私は凍りついてしまった。
今、私と目が合っている人は誰?何で文ちゃんの部屋に知らない人が居るの?何でそんなに爽やかな微笑を私に向けてるの?と恥ずかくなりうつ向いた瞬間「ギャー私って…Tシャツにパンツ?パンティ?ショーツ?ズロース?姿だ~」と慌ててカーテンを閉めてしまった…
最悪です、あの人は誰だったんだろうと思って再びカーテンを開けたみたけど、さっきの人はいなかった…
窓からは煙草の煙だけが私の方に向かって来ている。
青い空を見上げ、背伸びをして本格的に覚醒した私
その時、大きなバイクが2台隣の文ちゃんの家から走り去って行った。
凄く格好良いバイクとライダースーツの二人組だった。
あっ沙織ちゃんに電話しなきゃ…
バタバタと階段を降りて庭を見て見ると、文ちゃんちのおばさんと母さんが2人で井戸端会議中?
「おばちゃんこんにちは、久しぶりだったね。元気だった?」文ちゃんママにご挨拶。
「わ~莉華帰っとったんね?」文ママは私の事を自分の娘のように可愛いがってくれる!
そう、お隣同士の山本・市之瀬家は私以外は全員男の子供ばかり。
小さい頃から両家の皆が私の事を「姫」状態で扱う。
「今バイクが出てったけど、誰?」と尋ねる。
「あ~文彦たい。友達と九州一周ツーリングげな…あの馬のごとある大きかバイクで!」との事だ。
あ~あの人文ちゃんのお友達だったんた!
そう、私の事を氷上へと置き去りにして消え去った爽やか笑顔の人…
「あんた沙織ちゃんに電話せんばよ!」母さんの言葉が私のを真夏の昼下がりへ引き戻してくれた。
沙織ちゃんからの電話は久しぶりに帰った私の為に、アッコの家にお泊まり茶話会を…とのお誘いだった。