次の日曜日。



「おい、公平。これは一体どういう事なんだ」



突然呼び付けられて、状況が理解できない父が、困惑した声で僕に意図を問いただす。



母はキョロキョロと視線を散らし、落ち着かない。



二人をなだめて席に座らせ、来てもらった直子の家族に挨拶をした。


直子の父は恰幅の良い男で、白髪混じりのオールバックが、より一層貫禄を高めていた。


直子の母はおっとりとした垂れ目が印象的な日本女性だ。

見た目も喋り方も、直子は母親似だった。



来てもらった全員に着席してもらった所で、僕は深々と頭を下げた。




そしてタキシードのえりを正し、スピーチを始めた。






「本日はご多忙中にも関わらず、私達二人の結婚式にご出席いただき誠にありがとうございました。
心より御礼申し上げます。
今日から私達二人は夫婦としての新しい生活を始めるわけですが・・・」




夕焼けが傾く午後六時。



教会の鐘の音が、天空高く鳴り響いた。





花嫁のいない結婚式が始まった。