「姉ちゃん、友達が来てるみたい」
「え?」
翔太が言うと、お父さんの目付きが変わった。
まさか、ジョウだったら翔太は兄ちゃんって呼ぶだろうし…。
このタイミングにジョウだったら、恐ろしいことに……。
…誰だろう?
「……美緒?」
玄関から顔を出してみると、門柱に美緒が寄り掛かってた。
「美緒、どうしたの?電話しても出ないし…仁君、すっごい心配してたよ?」
「……のに…」
「え?」
美緒はずっと俯いていて、確かに手には携帯を持ってる。
よく聞こえなくて、顔を覗き込んでみると、美緒は顔を上げた。
「だいすきなのに!!」
「え?なに…」
「何で?何で日芽は彼氏居るのに…人の彼氏取ろうとするの…?」
こんな話……さっき、ジョウも言ってた…。
もしかして、あの時、美緒とジョウは一緒に居た…?
「少しずつ両想いになってたのに…!仁君もひどい……」
「待って、美緒。落ち着こ?」
「いや!!」
美緒の肩に手を置いて、落ち着かせようとした時、美緒に肩を思い切り押された。
だから私は、しりもちをついてしまった。
「…痛…」
「……も…やだ…」
「美緒!?」
急いで立ち上がって、走って行ってしまった美緒を追った。
でも、途中の信号が赤になって差が開いてしまった。
「…何でよ…」
悔しくて、虚しくて、涙が出た。
ジョウも美緒も…誤解してる…。
恋愛って…ムズカシイ…。