「…ジョウ!」
無言で歩く俺を追いかけて来る日芽。
俺の荷物と自分の荷物を持ってるから、かなりフラフラした足取りだ。
「何で無視するの?」
「………」
立ち止まれば日芽は俺の背中にぶつかって、振り向けば日芽は顔を上げた。
「何で?私何かした?」
「…仁と」
「仁君?…あー、さっきね。美緒をよろしくって言ってたんだよ。あんなの挨拶だよ」
「…ホント?」
「うん!」
ぱあっと明るくなった日芽が可愛くて、抱き締めてみた。
「じゃあ、何ともないんだな」
「当たり前」
「じゃあ…美緒は…」
「え?」
「いや、何でもない」
日芽から鞄を取って、肩に掛けた。
左手は日芽の右手に絡ませる。
「今日のジョウは、凄いヤキモチ妬きだったね」
隣でにっこりと微笑む日芽。
「日芽は心配じゃねぇの?」
「何が?」
「いや…俺が他の奴と喋ってる時とか…」
「だってね、ジョウは気付いてないかもしれないけど、ジョウの周りに居た女の子達、居なくなったもん」
「あ」
言われてみれば、俺の周りに居た奴達はいつの間にか居なくなってた。
―絶対に譲君の側から離れない―
何て言ってた奴も居ねぇ。
日芽の力かな。