「さっき、何か楽しそうだったな」



ジョウが首に巻いてるマフラーに顔を埋めて、呟いた。


背の高い彼を見上げると、不貞腐れていて口を尖んがらせてた。



「…何で?」


「日芽、めっちゃ笑ってたから」


「…妬いてるの?」



そう言ったけど、返事はない。


ずっと目を泳がせてる。



「ジョウ?」


「あー、もう!トイレ!!」



いきなり荷物を放り投げて、校舎の中に入って行ったジョウ。


妬いてたんじゃん。


辺りを見回してから、ジョウの荷物の上に座った。



「…あれ?日芽ちゃんじゃん」


「あ、仁君。美緒と一緒じゃないの?」


「美緒、委員会」



立ち上がって、仁君を見上げる。


ジョウよりは大きくないな。



「ジョウは?」


「あー…。どっか走ってっちゃった」


「え?そうなの?」



話してると分かる。


仁君の感じ、前よりは軟らかくなった。


前はツンツンした感じで、喋りたくもなかったから。



「仁君、美緒のことよろしくね。あの子、何でも背負っちゃうから」


「おう!任せときな!俺、美緒は本気なんだ。絶対泣かしたりしねぇよ」


「…ありがと」



そんな話をして、仁君は手を振って校舎の中に入って行った。


私は、またジョウの荷物の上に座った。