でも私だって負けない。
「…警察に言わなきゃダメだろ…?」
「…あのね、ジョウは知らないけど、私はあの人に助けてもらったの」
「…何だよ…助けてもらったら、誘拐犯でも良い人になんのか…?」
「………」
何も言い返せない。
もしかしたら、もう捕まって出たのかもしれないし…。
「…様子見ようよ」
「っていうか!!」
いきなりジョウは、壁を思い切り叩いた。
その後直ぐに、隣の部屋から仕返しが来た。
「…ジョウ?」
「様子見てどうすんだ?それで日芽がまた捕まって、どうにかされちまったら…」
「………」
「…嫌なんだよ…」
俯いて、声を絞り出す様に言うジョウ。
私はただ、聞くだけしか出来ない。
「…あんな毎日、絶対嫌だ」
「……うん」
ゆっくりと私の首に手を回すジョウは、若干震えてる。
「…日芽も、辛かったろ…?」
「……うん」
それを最後に、私達は沈黙した。
私の左には、少し痛んだジョウの金髪。
こうして近くにジョウが居ることは当たり前になってるけど、前まではそれは普通じゃなかった。
「大丈夫だ!何かあっても、俺が守ってやっから!」
親指を立てて、歯茎まで見せて笑うジョウ。
それを見て、私も自然に笑顔になった。
だから、涙が溜まってることなんて、気付かなかったんだ。