「適当に座ってな」



部屋を見回していると、ジョウは台所へ歩いて行った。


案外綺麗に整理されてる…。


言われた通り、テーブルの近くに腰を下ろした。



「オレンジジュース!」


「あ、ありがと」



何故かニコニコのジョウを不思議に思いながら、オレンジジュースを一口飲んだ。



「美味いべ?」


「うん」



オレンジジュース…



「意外と広いんだね」


「まあね。一人暮らしには丁度良い大きさ!」



あはは、何て笑いながらも、内心は疑問だらけ。


親はどうして居ないの?


家賃とかはどうしてる?


ご飯ちゃんと食べてる?


家族と一緒に暮らしてる私が言えることじゃないよね…。



「日芽、何か変」


「え?」


「何かあった?」


「………」



私がつっかかってるのは、ジョウの一人暮らしの理由じゃない。


ホントに気になってるのは…さっき見掛けた、シンのこと。



「…ジョウの家に向かってる途中、あの人を見た……」


「…誰…?」


「私を誘拐した…男…」


「…え……?」



ジョウは凄く驚いた様で、目を真ん丸く見開いた。



「…走ってたから、良く見えなかったけど…」


「じゃあ、また誘拐されるかもしれねぇってことかよ…!」


「ちょっと待って!」



暴れ出したジョウを必死で止めた。


腕を掴んだだけで、軽く降り払われてしまいそうな勢い。