家に入ると、相変わらず静かで寂しげな空気が広がった。


スリッパに履き変えると、弟の翔太がやって来た。



「お帰り、姉ちゃん」


「ただいま…お母さんは?」


「買い物!姉ちゃん、宿題分かんないとこあるから、教えてよ」


「えー!?」



手を引っ張られながら、リビングへ歩いた。


ソファに腰を下ろすと、目の前には小学4年生のドリルが開かれてあった。



「簡単だ…」


「姉ちゃん、それ、嫌味?」


「違うよ。何で小4が嫌味とか言うの?」


「今時だからね!」


「…は?」



威張る翔太を横目に、やっていない問題を確認する。


割り算の問題だった。



「これはね…」



―ピロリン…



携帯が、鳴った。


その音を聞いた瞬間、血の気が引いたのは、気のせいだろうか。


今は、取り敢えず無視をしよう。



「………そういうこと!サンキュー」


「ありがとう、でしょ!」



頭を軽く叩くと、翔太はうるさいと言い、問題を進めた。


私は、恐る恐る携帯を開く。