『譲、元気?お母さんは今日から仕事が入ってやっと生活が安定しそうよ。譲は…』
―ピッ
留守電を削除した。
度々かけて来る母親の留守電は、まともに聞いたことがない。
「はぁ…」
そのままベッドに横になった。
まさか、日芽が俺ん家のこと訊いてくるなんて……
「考えてなかった…」
田舎から、今通う高校を受験した。
母親はそれに猛反対。
当たり前だ。
父親が居ねぇんだから………
「バイト、行くか…」
重い体を起こして、眠気を覚ます様に目を擦る。
俺は、今まで何をしてたんだろう。
好き勝手やって、無視して振り回して…
日芽が居てくれて良かった。
日芽が居てくれたからこそ、俺は変われた。
「…もしもし。母さん?譲だけど…」
ホームで久し振りに母親に電話してみた。
ホントに譲なの?
元気?体は?
お母さん嬉しい…
そんなことを言って、泣いていた。
何故か俺は泣けなかったけど。
そのまま、特に話す事もなく、電話を切ったんだ。
「…一歩前進か…?」
呟くと、電車が来た。